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2013-11-16

ごちりとうさん (25・26・27合併号)

2日ほど抜けましたので、いつもより多めにしております。

私も三十路を通り過ぎ、和枝ねえさんだけでなく私自身から見ても、め以子の振る舞いにたいしていろいろと注文がつくような目線になってまいりました。朝ドラと共に人生のステージが進み、人は考え方も少しずつ変化してゆくものだということを教えてくれる素晴らしいコンテンツです。こんなに和枝姉さんに感情移入する日が訪れるとは思いもしませんでした。

和枝姉さんの考えというのは、明確に示されています。また、行動原理やそこに至る経緯も、示されています。今のところは西門の家と格を守り繋いでいくことへの執着がブレないので、あらゆるイビリやあらゆる嫌味に筋が通っています。め以子は若いので、一つ一つの注文に心が揺れます。これは幼馴染とのやりとりに示されていました。「わかってる、わかってるけど」それでも心が折れそうになります。自分の筋は「悠太郎さんんい365日美味しいものを食べさせたい」ですから、今は認められようという思いが先に立ちます。

一時期の朝ドラは、こういう局面においても現代っ子の明るさが古いしきたりを打ち破っていくという構図になっていました。「どんど晴れ」などがそうです。

時代が進むにしたがって考え方が新しくなるということが朝ドラの中に反映されている一方で、昔からの視聴者からの不興を買っていたのも事実ではないでしょうか。それは朝ドラ2000年代の低視聴率化に歯止めがかからなかった時期と重なります。

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さて、その後朝ドラがいろいろと試行錯誤を重ね、「あまちゃん」のようなお祭り騒ぎ作品に至ることでとりあえず場を温めて和ませました。

そして次にやってきた「ごちそうさん」は、大変重要な役割を担っています。
朝ドラという延々と続く伝統のなかで、「朝ドラ家のしきたり」を参加者に伝えようとしているのかもしれません。

「ごちそうさん」は「おしん」みたいだという声が聞こえますが、私はおしんは見たことが無いので語ることができません。見たり体験したことがないことは書けないのです。

かつて、GLAYの作詞作曲を手がけるTAKUROは「自分自身が体験したこと以外は詞にはできない。だから『虹を渡って』とは言えないし書けないんです、虹を渡ったことがないから」というようなことをインタビューで語っていました。素晴らしい意見だと思います。

それはいいんですが、では「ごちそうさん」は現時点で朝ドラのターニングポイントとなる作品になるかといえば、答えは NOです。

ごちそうさんは「土曜日がある。土曜日があればなんとか話はまとめられる」という土曜日依存に陥っています。9回は藤川球児がいるから任せておけば大丈夫という、かつての阪神タイガースに似ています。

しかし、ごちそうさんはちょっとマズいところがあります。

ごちそうさんは、8回裏が終了した時点でスコアが0−0の状態で試合を藤川球児に託しているようなものです。ちゃんと点を入れてリードを奪ってから抑えに繋がないといけないのに、仮にゼロ点に抑えてもせいぜい引き分けという局面で藤川球児を登場させます。

朝ドラの場合それによって何が起こるのか。全てが土曜日に解決してしまう、という現象です。これが2000年台の朝ドラが陥っていたことです。もっと言えば阪神タイガースが陥っていた状態とも重なります。

戦力としては素晴らしいのに、日本一に届かなかった、阪神タイガースと大変状況が似ています。和枝姉さんという近年の朝ドラ稀にみるエースピッチャーを擁しながら、このままでは和枝姉さん頼みになり、抑えの土曜日依存が進み、ちょっとバランスのわるい状態になってしまうのです。

ハプニングが起こって大事になって、最後にめ以子がピシャっとしめてめでたしめでたし・・・・いや、半年の全体を通じてそれならいいかもしれません、しかし毎週それを見せられていてはちょっと困ります。

どうか、「土曜日で解決」という流れはあまり続けないで欲しいです。私が現時点でこの作品がターニングポイントに推挙できない理由です。

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あまりにも宮嶋麻衣ちゃんが出てこないので、他に色気のある女性キャラクターはいないかと物色してみると加藤あいが目につきましたが、これまた全然画面に出てこなくなりました。どうも、ごちそうさんは登場キャラクターが少なめですね。女性に限らず、かなり限定されたキャストで物語を回してる感じがいたします。


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ちりとてちんに登場する、徒然亭草原役の桂吉弥さん、本職の落語をするときはかなり抑えめに演じられているような感じがします。おそらく本気を出してしまうと草若師匠や草々の落語がちょっと弱くなってしまうからではないかな、と勝手に思っていますが。

ただ、やっぱり随所に挿入される回想シーンでの草若師匠の大きさ、暖かさ、迫力、どれを取っても上方落語四天王と異名をとるだけのことは感じてしまいます。ここまでの丁寧な描き方をごちそうさんに要求するのは酷かもしれません、なにせ相手が朝ドラ最強の作品ですから。でも、同シーズンに放送となったのも何かの縁です、おなじ大阪を舞台とする作品として今後は月曜から金曜までまんべんなく使って、朝ドラをやってほしいと願うばかりです。