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2013-10-24

ごちりとうさん (9)

完全にラブコメ、または、完全に落語のような世界、ということに尽きる本日のエピソードでございました。それで尽きてしまってはなんですので、ちょっと前の話でも。

先週土曜日のちりとてちんには「あまちゃん」の中で登場する「あるシーン」と共通するシーンがあったのはお気づきでしたでしょうか。

鉄道に乗って旅立つヒロインに向かって大漁旗で応援する、というシーンです。

このシーンをよくよく見ると両作品の性格の差が見えてきました。

あまちゃんでは、夏ばっばが海岸で大漁旗を振って応援します。大変、絵になるシーンです。しかしこのシーン以前にアイテムとして大漁旗は登場していません。画面上のどこかには映っていたのかもしれませんが、登場人物の夏ばっばと重要アイテムの大漁旗が具体的に結び付けられている演出は無かったように思います。夫が漁師で海女なんだから大漁旗ぐらい持ってるでしょ、という前提で描かれています。

映像としてはあまちゃんのほうが優れていたと感じます。ですが同時にあまちゃんは「映像表現に頼った作り」になっているとも言えます。

一方で、ちりとてちんはどうか。まず前日までに「ふるさと」の歌と大漁旗を話に登場させておき、その後旅立ちのシーンで「ふるさと」の熱唱という伏線回収を行いながら大漁旗を振って、二つを合流させて涙を誘うシーンを組み上げています。
つまり目と耳のダブルパンチで視聴者に訴えてくるのです。

細やかさ、丁寧さにおいてはちりとてちんが一枚上だったと思います。もちろんあまちゃんのほうはテンポがよく、変に説明臭くならないという良さもあったと思います。

朝ドラは長い戦いです。緩急も重要です。あまちゃんのようなロケットスタートから走り続ける展開は異色で、細やかな気配りが安定したドラマを組み立てているのも朝ドラならではであり、ここが「ちりとて」が朝ドラ最強に君臨する要因でもあるのです。

それにしても、和久井映見演ずるお母ちゃん、嗅覚が鋭すぎますね。
宮嶋麻衣ちゃんが「ちりとてちん」のあと「カーネーション」「純と愛」そして今回の「ごちそうさん」と、朝ドラに何度も登場するぐらい可愛く魅力的な女優さんになっていくということをとっくに嗅ぎつけていた私の嗅覚と同じぐらい鋭いです。